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神経難病における移行期医療
2014年に日本小児科学会から「小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」1)がなされ,病態・合併症の年齢変化や身体的・人格的成熟に即して適切な医療を受けられるように配慮することが提案されている.厚生労働省は小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業を立ち上げ,移行期医療体制を推進している2).小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業においては,移行期医療支援とは,患者のセルフケア技術の獲得と意思決定への積極的な参加を促すための自立支援(自律支援)を行い,必要なケアを中断することなく成人期の適切なケアにつなげることを目的に小児科から成人中心の医療に移行するプロセスの支援を意味している2).これまでに難病対策委員会・小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会合同委員会により,移行一般に対し米国で作成されたGeneric Core guide3)をもとに移行パターンの総論や例を挙げた子供から大人への成長に伴う個々人のニーズを満たすために必要な一連の支援プロセスについてのガイドが提案されている2).日本小児腎臓病学会,日本小児外科学会などが疾患別の移行ガイドを策定しているが,神経領域においては日本神経学会でワーキンググループが構成され議論がなされている途中である.
移行の必要な神経難病の多くを占める神経筋疾患,例えばDuchenne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)や脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)Ⅰ・Ⅱ型,福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama congenital muscular dystrophy:FCMD)などは乳幼児期に発症する.小児科医に診断を受けて治療介入が行われ固い信頼関係が築かれたのち,これまでは青年期を迎える頃に比較的短命で死亡することが多かった.そのため患者家族・小児科主治医も重症神経筋疾患を「子供の病気」と捉え,小児科医のみを主治医として人生を終えることに疑問の余地はなかったと推察される.
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