連載 障害者の災害支援・第1回【新連載】
社会的弱者と災害—誰一人取り残さないための原則とは?
立木 茂雄
1
,
川見 文紀
2,3
Shigeo Tatsuki
1
,
Fuminori Kawami
2,3
1同志社大学社会学部
2同志社大学大学院社会学研究科
3日本学術振興会
1Department of Sociology, Doshisha University
2Graduate School of Sociology, Doshisha University
3JSPS
キーワード:
東日本大震災
,
社会的弱者
,
誰一人取り残さない防災
,
パネル調査
,
支援原則
Keyword:
東日本大震災
,
社会的弱者
,
誰一人取り残さない防災
,
パネル調査
,
支援原則
pp.83-89
発行日 2022年1月10日
Published Date 2022/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202410
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
「もはや被災者ではない」と当事者が実感できるまでの時間の流れを災害過程という.これは発災〜10時間の失見当期,10時間〜102時間の被災地社会形成に向けた展開期,102〜103時間の災害ボランティアが活躍する災害ユートピア期,103〜104時間の社会基盤の再建期,104〜105時間の住宅・都市・経済・生活の再建期といった10のべき乗のスケールに従う1).筆者らのチームは,発災から10年間(約105時間)にわたり宮城県名取市で5回の生活再建現況調査を実施してきた.2021年3月の最終回の調査では,「もはや被災者ではない」と答えた人は,初めて半数を超える約6割に達した.この結果は,人や社会のレジリエンス(被災の衝撃からの回復や順応)の重要な要素が時間であることを物語る.けれどもレジリエンスの軌跡は万人すべてで同じではない.本稿では,名取市調査にもとづき「誰が取り残されたのか」を明らかにし,そのエビデンスをもとに災害時ケアプランや災害ケースマネジメントに代表される「誰一人取り残さない」防災の原則を考察する.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.