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はじめに
わが国では,2018年に「腎臓リハビリテーションガイドライン」(日本腎臓リハビリテーション学会編,南江堂)が発刊されたこともあり1),腎臓リハビリテーションという言葉は定着しつつある.ただし,慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)のなかでも,透析治療などの腎代替療法が導入されていない保存期CKD患者に比べて,運動療法の効果に対するエビデンスが多く報告され,運動療法が推奨されている血液透析患者に対しても,腎臓リハビリテーションを実践している施設(クリニックなど)はきわめて少ないのが現状である.
Bennettら2)は,血液透析導入時には日常生活活動(activities of daily living;ADL)が自立していた患者があっという間にdisabilityを有してしまう(歩行動作を主体とした生活ができなくなる)様をjourney to physical dysfunctionと称し,この機能ならびに能力低下へのjourneyを見過ごしてしまう医療関係者の寛容さは受け入れ難いと皮肉を述べている(図1)2).血液透析患者においては,透析治療導入開始前から既に身体機能は低下していること3),導入後にはさらに脆弱性が高まることで身体機能低下ならびにADL低下が互いに影響し合い,ひいては生命予後の悪化を招いていることは周知の事実である4).ただし,これらの悪循環を是正するために,一律に(いずれの患者に対しても),共通の運動プログラムを提供するような運動指導は医学モデルではない.腎臓リハビリテーションを効果的に実践するためには,運動療法を必要とする患者を的確に層別化するとともに,機能や能力を低下あるいは制限させる原因を検索し,予防的な介入を医療チーム(施設)内で実践する必要がある.
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