Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
わが国の慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)の患者数は約1330万人と推計されており,透析患者数においては2017年末に334,505人1)にまで増加している.この透析患者の問題として高額な医療費が指摘されており,それを抑制するためのCKD重症化予防はわが国の喫緊の課題である.2018年に厚生労働省より腎疾患対策検討会報告書2)が公表され,そのなかの達成すべき成果目標として2028年までに年間の新規透析導入患者数を現在の39,000人から35,000人以下へ減少させることが掲げられた.
CKD患者は高齢者に多い疾患群であり,糖尿病や心不全などの内科疾患だけでなく,脳卒中や運動器疾患,さらにはフレイルによる身体機能低下や認知症など重複障害の状態であることが多い.このような高齢CKD患者の身体機能の低下は,腎予後や生命予後3)の不良因子となることが報告されている.この他にも,CKDは認知機能低下とも関連4)しており,CKD患者の認知機能の低下は疾患管理が困難となるだけでなく,末期腎不全に進展した際に自らの意思で腎代替療法の治療選択ができなくなる可能性も危惧される.
これらのことから,われわれはCKDの重症化予防には腎機能以外にも,身体・認知機能低下を予防することも非常に重要であると考えている.そのためには,医師だけでなく,看護師,管理栄養士,薬剤師,理学療法士などの多職種により生活習慣の改善,食事療法,生活習慣病の治療管理を集学的に,かつ継続して行っていく必要がある.
本稿では,透析導入前の保存期CKD患者に対する運動療法の目的と効果について概説し,当院の多職種チームで行っているCKD教育入院について紹介する.
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.