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はじめに
義足への高機能なテクノロジーの導入を理解するうえで重要な事柄は,人工知能(artificial inteligence;AI)に代表される近年のロボットテクノロジーのハード面の目覚ましい発展とそれを扱う側であるソフト面である臨床現場との乖離の大きさである.大切な真実は,テクノロジーの進化によって従来では成しえなかったような切断者の機能改善が可能になってきたということである.下肢を欠損したことに対する機能補てんの代替手段・道具として,日常生活支援,機能改善におけるリハビリテーション分野においてそのテクノロジーが積極的に導入されていくことは当然である.
しかしながら,高度なテクノロジーを駆使したコンピュータ制御義足といった高機能義足には常に大きな落とし穴が存在する.その機能に大きな期待を抱くあまり,切断者や臨床スタッフ(医師,理学療法士,義肢装具士)が意図した機能獲得目標と現実に達成し得た機能とが時として一致しないことが生じる事態である.このような事態を回避し,コンピュータ制御義足をリハビリテーション手法として有効に臨床現場に根付かせるためにはどうすべきかに今こそ関心を寄せる必要がある.特にこの数年というきわめて短い期間において利用可能な高機能義足が数多く出現した.それらを活用するためには,それらを応用する側の臨床スタッフに適切な知識と訓練経験が必須であることは重要である.しかし,繰り返しになるが,残念ながらそうではない.現実問題としてこれらのコンピュータ制御義足を適切に臨床現場で運用するためのハードルはまだまだ高いと言わざるを得ない.臨床現場において,これらコンピュータ制御義足を真に切断者に有効なものとするためには明確なリハビリテーションプログラムを確立する必要がある.今はまさに過渡期である.臨床スタッフが着実に経験と証拠を積み重ねていくことで初めて真のコンピュータ制御義足の可能性が見えてくるのではないか.本稿では切断者の明るい未来を照らすさまざまな高機能なコンピュータ制御義足を紹介するが,上述した課題が依然未解決な状態であることを留意していただければ幸いである.
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