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はじめに—脳卒中後の上肢機能障害と新たな治療方法
脳卒中後の上肢機能障害は,重大な機能障害の1つである.脳卒中発症後6か月時点での麻痺側上肢の機能障害の残存率は30〜66%であり1-3),完全に改善するのは5〜20%と報告されている4).特に手指の分離運動が出現していない例では実用性の獲得は非常に限られる5).一側上肢の機能障害により,食事や整容などの日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)に影響が及ぶこととなる6).
これまで片麻痺の上肢機能障害に対しては,その機能障害の程度によらず,能力低下へのアプローチ,すなわち健側による代償動作の獲得が優先されてきた.その結果,麻痺肢の機能障害へのアプローチが十分なされておらず,いわゆる学習性不使用(learned non-use)を作っていることが指摘されている7).
しかし,近年の脳機能イメージングや電気生理学的手法の発展に伴い,脳卒中などによる損傷脳における可塑性の存在が示され,リハビリテーション分野においても機能障害や神経機能の改善をめざす新しい治療法が開発されるようになってきた.特に,これまで治療手段がなかった重度上肢麻痺に対し,Brain Machine Interface(BMI)を用いたリハビリテーション8),運動イメージ併用電気刺激訓練9),hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation therapy(HANDS療法)10)などのアプローチが報告されている.
機能障害の改善は,日常生活での麻痺肢使用につながり,さらなる機能回復をもたらすという報告がある11)一方で,機能改善しても日常生活での麻痺肢使用頻度は変わらなかったという報告もあり12),このギャップに適切にアプローチすることが重要である.そのためには,患者の日常生活により密接した評価,介入ができる看護師の担う役割は大きい.
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