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はじめに
本稿では,筆者らが行ってきた脳卒中患者の核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI)拡散テンソル法(diffusion tensor image;DTI)脳画像と運動機能障害の帰結(予後)に関する研究知見を紹介する1).最近のシステマティック・レビューによると,脳卒中の予後予測に使用される脳画像にはコンピュータ断層撮影(computed tomography;CT),構造MRI,機能的MRI,そしてDTIがある2).これらのうちCTに関する支持的エビデンスは乏しい.構造MRIは臨床で広く用いられているが,予後予測のための系統的評価法は確立されていない.機能的MRI(functional MRI;fMRI)は,一般に行動タスク遂行中(例:手指タッピング)に撮像され,その行動に応じた局所脳血流の信号変化(blood oxgen level dependent;BOLDなど)を捉えるものである.そのため脳血流の著明な遅延がある症例(例:内頸動脈狭窄)では,得られた脳画像の解釈が難しい.また障害の回復過程において運動は質的量的に変化する.例えば手指タッピング動作の指示に対して,発症直後に粗大な把握動作がかろうじて可能な段階から,数か月後に分離した指折り動作が可能となる場合がある.このように運動が一定でない場合,得られた脳画像,すなわち賦活している脳領域の解釈には注意を要する.近年,行動タスクを課さない安静時のfMRI(resting-state fMRI)と運動機能回復の解析が試みられている3,4).しかし現在のところ,臨床的実用レベルの報告はまだ多くはない.一方,DTIは脳内神経線維の障害を非侵襲的に評価できるほぼ唯一の画像的手法である.スキャナーの中で患者が数分間臥位を保つだけで撮像が可能であるため,多忙な日常診療の中でもデータ収集が可能である.fMRIと異なり,タスクの遂行状況や脳血流の問題を考慮する必要がないため,得られた脳画像の解釈は比較的単純である.事実,前述レビュー2)で,DTIが最も予後予測に有用である可能性が示唆されている.
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