Japanese
English
Medical Essay
失語症巡礼—その3 バルザックの見たブイヨー
Pelerinage d'aphasiologie. Chap. 3. Bouillaud vu par Balzac
岩田 誠
1
Makoto IWATA
1
1東京大学医学部脳研究施設神経内科
1Department of Neurology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.604-607
発行日 1975年6月10日
Published Date 1975/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903745
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
ブイヨーとビアンション
Brocaの大発見の裏に,Bouillaudの"言語機能は前頭葉に存す"という仮説があったことは,現在誰もが認めるところである。彼自身は直接的な証明をなし得なかったとはいえ,Gallの,いささかまがいものめいた骨相学から,近代医学の一つの柱となる大脳半球機能局在論への橋渡しをした彼の功績は偉大である。しかし彼は,決して単なる神経学者として片づけられるほど単純な存在ではなかった。その時代のすべての医学者がそうであったように,彼の学問上の業績は,広く内科学一般にわたっている。静脈閉塞に基づく浮腫の発生機序の解明,リウマチ熱における心内膜炎(Bouillaud病)の発見等々,今日われわれが医学の常識と考えているものの中には,実に彼の手によって完成されたものが少なからず存在するのである。
さてこのBouillaudこそ,文豪バルザックが"人間喜劇"の中に登場させた,"シャルル10世の御世からルイ・フィリップ治下におけるパリの名医,レジョン・ドヌール4等勲章侃用者,30歳にして医学部教授となり,さる病院の第1人者である"オラース・ビアソション(Horace Bianchon)であることを知ったのは,トロカデロからオートゥイユに向かうレヌアール通り(Rue Raynouard)の・ミルザックの家を訪れた時であった。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.