書評
近藤克則 著「健康格差社会への処方箋」
根本 明宜
1
1横浜市立大学附属病院医療情報部
pp.746
発行日 2017年7月10日
Published Date 2017/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201028
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近藤克則先生が2005年に『健康格差社会—何が心と健康を蝕むのか』を出されたころは,小泉内閣が郵政省を悪者にしたてた「郵政選挙」で大勝し,劇場型政治,ポピュリズムに舵を切ったころである.「20年遅れの新自由主義」といわれ,規制緩和,自己責任,小さな政府がもてはやされたが,旗振り役が規制緩和の恩恵を受ける会社の役員になったり,お仲間に有利な規制緩和があったりと政界には利益相反という言葉は存在しないようである.教育においても独立法人化した大学の授業料は下がることはなく,奨学金の名を借りた高利貸しが跋扈し,大学の偏差値と保護者の収入の相関がいわれ教育機会の均等も怪しくなっている.
その後,民主党政権と東日本大震災を経て第二次安倍内閣になり,アベノミクスとやらで経済発展のみが強調され,トリクルダウンといいながらも,上のほうのグラスは大きく,いくらついでも下層にはおこぼれは来ないまま経済格差が未曽有に拡大した.まっとうな議論をしないままの立法や強権に忖度する政治がはびこり,報道や人権の抑圧が国外からも指摘されている.
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