JIM Library 私の読んだ本
―近藤克則(著)―「健康格差社会」を生き抜く
松村 真司
1
1松村医院
pp.717
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102001
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1963年公開,黒澤明監督,「天国と地獄」.黒澤の数多い傑作作品のなかの一つである.本書を一読した後,この映画のラスト・シーンを思い出した.貧しい家庭に生まれ,医師の道を歩むも誘拐および殺人の罪で拘留中の加害者竹内と,同じく貧困家庭出身ながら一代で身を興し,竹内に身代金を渡したために失脚した被害者権藤とが,拘置所の金網越しに対峙する.山崎努演じる竹内は,貧しい自宅から,山の上に屹立している権藤の豪邸を見上げる日々のなか,いかに憎しみを募らせたかを語る.当時新人俳優だった山崎の鬼気迫る演技は,善悪とは何か,人間の尊厳とは何か,という根源的な問いを今なお私たちに投げかけている.
本書は著者らが行った愛知老年学的評価研究(AGES:Aichi Gerontological Evaluation Study)から得られた膨大な実証データの知見を中心に,「健康における不平等」「健康格差」の問題に関する国内外の研究結果を一般向けにまとめ,「生存」「健康」という,等しく守られるべきものを巡って現在社会に生じている問題を提示するともに,それらに今後どのように対応すべきかを解説している啓蒙書である.
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