Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「葛城事件」—無差別殺傷事件の深淵を辿り学ぶ試み
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1021
発行日 2016年11月10日
Published Date 2016/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200775
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駅頭や大規模商業施設など人の集まるところで刃物を振り回す,いわゆる無差別殺傷事件が後を絶たない.このような悲劇のルーツは果たしてどこにあるのか.「葛城事件」(監督・脚本/赤堀雅秋)は,この問いに対する一つの回答である.
本作における悲劇の元凶は,自分の「正しさ」を疑うことのない,自己理解の乏しい父親である.三浦友和演じるこの父親・葛城清は,長男が自死し,次男が無差別殺傷事件で死刑になり,妻が精神疾患で入院しても,自分に非があるとは少しも思わない.清なりに父親としての使命感や愛情をもっているが,それは自己流の偏狭な価値観に基づくものであり,押しつけられる家族には光の見えない地獄の日々となる.
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