特別寄稿
私たち1人ひとりが問われている―神戸連続児童殺傷事件の病理
横川 和夫
1
1前:共同通信社
pp.44-50
発行日 1998年1月25日
Published Date 1998/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901765
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神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件は,子を持つ親だけでなく,学校教育現場にも大きな衝撃を与えた.殺人などの疑いで神戸地検から送致された中学3年生(15)に対し神戸家庭裁判所は,1997年10月17日に一連の非行事実を認定したうえ,「性格的に偏りがあったが心身耗弱ではなかった」として,医療少年院への送致を言い渡し,関東医療少年院に移送された.少年は長くて26歳まで,11年間,精神科医の指導を受けながら,再生への道を歩み始めることになる.
川崎の金属バット殺人事件をはじめ,東京・綾瀬の女子高生コンクリート詰め殺人事件など,青少年が引き起こすさまざまな事件を追跡取材してきた私にとって,この連続児童殺傷事件は,単に1人の中学3年生個人の資質によって起きたものではなく,日本の学校教育など,少年を取り巻く社会環境のゆがみ,ひずみが成長発達に大きな影響を与えた結果,噴き出してきた社会病理と受け止めている.
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