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はじめに
日本においてリハビリテーションは身体分野が大部分を占める.日常生活動作の概念が確立し早期離床・早期歩行などが大きな成果を上げたことから発展して,障害者の社会参加や全人間的復権を目指す諸活動を統合した言葉として用いられるようになった1,2).
一方,精神科リハビリテーションは,発症直後の急性期を過ぎたが入院生活を送る慢性期統合失調症患者に対する取り組みに端を発する.統合失調症そのものに起因する認知機能障害に加え,長期入院の末に生じる生活能力の低下が認められたため,入院生活中の集団療法や作業療法,レクリエーションが精神科リハビリテーションと考えられていた3).しかし,諸外国との比較から日本での社会的入院の解消・退院促進の必要性が叫ばれ,また1995年に「障害者プラン—ノーマライゼーション7か年戦略」が策定されて障害をもつ人も必要な支援を得て社会の中で普通の生活が送れるようにするというノーマライゼーションの理解が進んだ結果,「精神科リハビリテーション」とは「学習過程と環境支援を通して可能な限界まで対人的・道具的役割機能を回復させる」とともに,「機能の再獲得に限界があるときには環境調整や環境側の支援を強めることによってその限界を代償する」こと,これらによって「回復を助け,専門家による最小限の介入で,彼ら自身が選択する環境において落ち着き,満足できる生活を送れるようにすること」という理解4)が共有されるようになった.同時にその背景には「当事者の個別性を重視して,当事者が希望する社会生活の実現に向かい,当事者と協働で意思決定を行いながら支援する」というリカバリーを重視した支援概念の広まりが存在する5).
行政面では2004年に厚生労働省が「精神保健福祉施策の改革ビジョン」を策定し,2005年には障害者雇用促進法が成立,2014年には障害者権利条約に批准,2016年には障害者差別解消法が施行されるなど,行政措置も充実が図られつつある6).
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