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はじめに
リハビリテーションは単なる機能回復訓練ではない.そして「リハビリテーションは全人間的復権である」1)という指摘は,統合失調症をもつ方のリハビリテーションにおいても同様である.すなわちそれは,幻覚や妄想といった陽性症状のコントロールや適切なコミュニケーションスキルの獲得,抑うつ気分,意欲,動機づけの改善といった要素的なリハビリテーションだけを意味するのではなく,当事者が,病をどう体験し,それを抱えながら自らの希望(aspiration)を少しでも達成し歩んでいくのかを意味する.そこでは障害をもちながらも回復(リカバリー)するのである.われわれ医療者はそのために関係性を意識しておくことが必要になる.宮内は,「予診の段階からリハビリテーションが始まっている」と述べた2).特に対人関係の障害を抱え,新しい人間関係構築がストレスになりやすい彼らにとって,治療者との関係性は顔を合わせた時,さらには直接には出会う前の,担当すると決まった時から始まっている.
関係性を作る外的環境として留意すべき点は,わが国の精神科病床数は各国と比較していまだに3倍近く多く,世界の脱施設化の流れからは完全に遅れていることである(図1).わが国の精神科病床数は世界中の全精神科病床数の2割にも達するとも言われている.したがって治療プログラム,リハビリテーションは病院中心のものがイメージされやすい.しかし統合失調症に限らずリハビリテーションの目的が日常生活や就学・就労を通した夢や希望の達成であり,医療施設のなかだけでできることは限られていることを忘れてはならない.
本稿ではこうした背景のなか,病院外で行う統合失調症のリハビリテーションを含めて紹介したのち,筆者の取り組んできたデイケアを中心としたリハビリテーションについて概説する.
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