Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「人間の壁」—障害のある子供を軸に戦後民主教育の実践モデルを提示する
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.941
発行日 2016年10月10日
Published Date 2016/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200751
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「二十四の瞳」(監督/木下惠介・1954)で描かれていたように戦前の生活綴方教育は弾圧の対象であった.高峰秀子演じる小学校教師・大石は生活綴方教育から生まれた子供の作文を教材として活用していたが,生活綴方教育を推進する同僚教師が警察に連行されたことから,いよいよ教師という仕事に嫌気がさしてくる.生活綴方教育を推進する教師には「アカ(共産主義者)」というレッテルが張られ,そのレッテルは良心的な教師にすぎない大石にも忍び寄る.
では,戦後になって生活綴方教育への迫害が消失したかといえば,そうとはいえない.「人間の壁」(監督/山本薩夫・1959)の小学校教師・沢田(宇野重吉)が,生活綴方教育を実践するがゆえに町の保守勢力・政治家から「アカ」とみなされ,「体罰」事件を口実に辞職に追い込まれる.本作は,朝日新聞に連載された石川達三の同名小説を映画化したもの.
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