今月の考察 職能団体とその活動
民主主義と職能団体
水田 洋
1
1名古屋大学経済学部
pp.51-54
発行日 1968年8月1日
Published Date 1968/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914085
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日本の民主主義
敗戦の混乱がまだおさまらず,旅行者はたいていリュックサックを背負っていた時代であった。九頭竜川にそった町に旧友をたずねた帰りに,ぼくは福井市から汽車にのった。市街地をとおりぬけていくとき,ふと目にとまったのは,「デモクラ・ホール」というミルク・ホールの看板だった。民主主義ということばが公認されてまだ1年にしかならないのに,それははやくも地方都市のミルク・ホールの名称になるまでに定着したといって手ばなしで感激するほど,ぼくはお人好しではない。科学者は,ものごとに対する鋭敏な反応という点では人がよくなければならないが,同時に,すぐそのものごとの裏面まで見抜くという点では,人がわるくなければならない。そうでないと,科学は常識の枠をぬけだすことができないだろう。
そのときぼくが考えたのは,日本の民主主義はミルク・ホールの看板にとどまるのではないか,ということであった。予想はだいたいあたったようである。ミルク・ホールの看板を,政党の看板におきかえても,たいした変わりはあるまい。憲法には,一応,主権在民の原則がのべられているが,それをもっとも明白にのべている前文の冒頭においてさえ,「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し………。
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