書評
二通 諭 著「特別支援教育時代の光り輝く映画たち」
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.13
発行日 2016年1月10日
Published Date 2016/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200469
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本書は,2011年に二通氏が同じ全障研出版部から刊行した『映画で学ぶ特別支援教育』のいわば姉妹編で,主に「総合リハビリテーション」(医学書院)や「みんなのねがい」(全障研出版部)に連載された論考に基づいて編集・再構成されている.
本書は,「映画は,どんな時代を生きているのかについて知るためのテキスト」と考えて,「映画で障害者問題の解決の行方を考察する営み」を続けてこられた二通氏の中間発表的な決算として,位置づけうる書物である.特に,2007年の特殊教育から特別支援教育の移行に伴って,LDやADHD,高機能自閉症などの発達障害に対する関心が高まっているが,そうした時代のニーズを反映してか,本書では発達障害的な問題に関わる映画が数多く論じられている.具体的には,『サウンド・オブ・ミュージック』のマリアや『ノーウェアボーイ』のジュリア,『男はつらいよ』の寅さんや『シンプル・シモン』のシモンなどで,これらの人物に対する「二通流」の解釈には,氏の豊富な教員体験で培われた障害を抱えながら生きる者への暖かい眼差しを感じることができる.
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