メディカルエッセイ
一通の手紙
橘 政昭
1
1慶應義塾大学医学部泌尿器科
pp.296
発行日 1998年3月30日
Published Date 1998/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902309
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私たちの教室でKock回腸膀胱の手術を初めて行ったのは1985年1月のことである。このとき,私自身は米国の留学を終え,西海岸を旅行中であった。その後,2月から慶應義塾大学病院に勤務し,教室におけるKock第1号の患者さんを病棟で拝見した。しばらく臨床から遠ざかっていた私にとって,この術式はとても斬新でかつ魅力あるものであった。それからというもの,Kock回腸膀胱に取り付かれたように症例を重ねた。はっきりいって,当初は合併症がかなり多かった。Reservoirからの尿のリーク,そのための創感染,術後イレウス,晩期合併症として結石形成,導尿困難,重積の脱出,傍ストーマの尿瘻など,数多くの合併症を経験した。
これらの症例を重ねるうちに,術後早期のreservoirをなるべくドライに保つことが術後早期の合併症を予防するうえで有利と考え,シングルJ尿管ステントの留置を考えついた。次に非吸収性のメッシュを脚部に巻き付けていたが,これが何と脚部の腸管を貫通してreservoir内に迷入し結石形成をきたした。
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