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リハビリテーション科医となって20年が過ぎ,最近は20年後にはどのようなリハビリテーション医療が提供されているのだろうと空想して楽しんでいる.医学部卒業後,研修医としていろいろな科をローテーション研修していると,なぜリハビリテーション科を選ぶの? とほとんどすべての科の先生方から不思議がられたのを思い出す.先輩のリハビリテーション科医からは,そこに「愛」があるからだと答えなさいと冗談半分に言われたことが懐かしい.たしかに,現在のようにリハビリテーション病院と名のつく病院は多くなく,非常にマイナーであった.もっともマイナーであることは今でも変わりないが,その存在感は非常に大きくなっている.
現在の小学校1年生が20年後に就く仕事のうち,65%は現在まだ存在していない職業に就くだろうという報告がある.たしかに,20年前にウェブデザイナーやアフェリエーターなどという仕事はなかった.それに対し,駅の切符を切る人などは見かけなくなった.変化は,直線ではなく指数関数的である.あっという間に時代は変化していく.今後のキーワードとして,遺伝子治療,ロボット,人工知能などが挙げられるだろう.すでに試みられつつあるが装具や義肢は,3DCADを用いて3Dプリンターで作製する時代が遠くない将来訪れるだろう.がんは遺伝子治療で死亡者数は減少し,各臓器疾患は幹細胞から新たな健康な臓器を作製し入れ替えることで,心筋梗塞や不整脈での死亡も減少するかもしれない.脳卒中は,t-PAのような治療法が進化し,発症後48時間以内に治療すれば,麻痺は軽度ですみ要介護の原因にならない時代となれば,リハビリテーション対象疾患はどのように変化するだろうか.事実,リウマチは生物学的製剤の出現で治療法は大きく変化した.そう考えると,人は何で死ぬのだろうか? 20年後の死因の1位は肺炎かなと想像したりする.抗生剤治療やワクチン予防を行っても細菌やウイルスは常に自分を進化させ生き残り続けるだろう.また誤嚥性肺炎は単一臓器の入れ替えでは,単純に解決しないと思われる.そのため嚥下障害のリハビリテーションの重要性は今後も変わらないと感じている.もっとも,リハビリテーションの手技やアプローチ方法は変化しているであろう.
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