Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「現代任侠史」—障害者問題解決の道程に力を与える侠気と粋の文化の復権
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.483
発行日 2015年5月10日
Published Date 2015/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200245
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2014年11月10日,「健さん」こと高倉健が他界した.筆者が知る限り,名前に「さん」を付けて呼ばれている俳優は高倉健だけである.そこにあるのは,仰ぎ見るような尊敬の念であり,憧憬である.言うまでもないが,尊敬と憧憬の対象としての「健さん」は,1960年代中期から量産された「日本侠客伝」シリーズ,「昭和残侠伝」シリーズ等の任侠映画によって創出されたものである.ここでの健さんは,支配者や強者に理不尽な目にあわされ,鬱屈した思いを抱いている名もなき多くの人々の代弁者であった.加えて,人間のあるべき姿を示した道徳的な存在でもあった.これぞ粋な振る舞い,といった行動モデルを提示してくれたのである.
たとえば,「現代任侠史」(監督/石井輝男・脚本/橋本忍・1973)の冒頭部分は,人間たるものかくあらねばならない,とする映像によるテキストである.
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