リレーエッセー 先輩PTからのメッセージ
拓く道程への関心,そして挑戦
武富 由雄
1
1前・神戸大学医学部保健学科
pp.128
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105248
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いつの時代であっても,誰でも難題に直面することがある.どう解決すべきか,いったんは躊躇し,なかなか前に進むことができないのが凡人である.その時,後ろ向きに歩いては解決策は見い出せない.難題の壁を打ち破って進むのには,それ相応の身体的エネルギーと,これと思ったことを進めるための決断,精神的発動が必要であろう.
水野祥太郎教授(元・大阪大学整形外科教授)は一言「国際的な医療協力をやってくれないか」「やってみましょう」と答えたものの,その後は両肩に重い責任が覆いかぶさるのを感じた.砂漠の病院(アフガニスタン国)での医療協力の経験(昭和43年)はまさしく拓く道(未知)への関心,そして挑戦であった.当方はアラビア文字もペルシア語も,そして国情も全く無知の状態で赴任することになった.相手はリハビリテーションの“re”も分からず,理学療法の設備も無いに等しく,専門教育も技術教育も受けていない.置かれた環境のせいにばかりしていては神経症になる.いかに理学療法の技術協力を進めるべきか,自分なりに考えた.逃げや待ちの心理状態から脱却しなければならない.誰も解決策に導くヒントを与えてくれないし,また教えてはくれない.こちらから相手に攻めていかなければならない.
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