Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「思い出のマーニー」「ホットロード」—心の居場所を求めて彷徨う子供たち
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1105
発行日 2014年11月10日
Published Date 2014/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200059
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三田誠広『実存と構造』(集英社新書)によれば,神話には,息子が父と知らずに父を殺したり,母と知らずに娶ったりというような悲劇が反復されているところに構造的特徴があるという.すなわち,親子の確執,愛着上の問題から派生する不幸は神話の時代から何世代にもわたって続いているものであり,よくある話なのだ,と.翻って,「悩んでいるのはあなた一人ではない」というメッセージとしての機能をもつ.
モスクワ映画祭グランプリ受賞作品「私の男」(監督/熊切和嘉)も,父娘の禁断の愛を描き,神話的構造そのものである.筆者は熊切監督のマスコミインタビューの場に居合わせたが,監督は,この父娘のように周囲から祝福されることのない人々を描きたくなると語っていた.娘は,奥尻島を襲った津波で両親を失っているが,昨今,親が不在,あるいは愛着関係不全状態の子供を主人公とする作品が目立つ.これこそ現代社会の深層風景なのであり,思考すべきテーマである.
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