随想
精神医学における「器質性」の彷徨
新福 尚武
1
1成増厚生病院
pp.600-601
発行日 1986年6月1日
Published Date 1986/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205730
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精神医学の中心課題は「脳と心」で,精神医学の歴史はこれを中心にして展開してきたと見ることができる。ただの脳でもなく,ただの心でもなく,「脳と心」がつねにその中心問題になるというところに,精神医学が神経学や心理学と根本的に違う点があり,他科とは違った対応困難ないろいろの問題にぶつからざるをえない理由があるように思われるのである。そういう対応困難な問題の一つが「器質性」という用語で取り扱われているもので,この概念の変遷を通して精神医学の苦渋のあとを見ることができるが,また将来それがどのように変転するか,まことにおもしろい見物でもある。
器質性(organic)が精神医学以外の領域でどのように用いられているか,殆ど知らない。また,それが精神医学にいつ,だれによって,どのように導入されたかも,正確には知らないが,19世紀末にはすでに流布していたようである。
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