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はじめに
近年,切断の主な原因が外傷から末梢循環障害(peripheral arterial disease;PAD)や糖尿病(diabetic mellitus;DM)などによる内科疾患へと大きく転換している.その主役となるのは,高齢者の下肢切断である.リハビリテーション上の問題点として,加齢や合併症に伴い身体機能が低下していること,全身性疾患を背景とし切断後の生命予後が不良であること,高位での再切断や対側肢の切断となる例も多いことなどが挙げられる.このため切断後のリハビリテーションは,義足歩行による日常生活動作(activities of daily living;ADL)の向上を目指すことが難しく,生活の質(quality of life;QOL)向上と退院後の生活を支える観点から行われることも多い.
一方,PADやDMなどの進展や合併症として生じる足病変に対し,下肢を切断から守ろうとする救肢治療もここ10年ほどの間に急速に発展してきた.創傷治療として,抗生物質,デブリードマンのほかに創傷被覆材の進歩や局所陰圧閉鎖療法,マゴット療法などの進歩があり,血行再建としてバイパス手術や血管内治療のほかに先進医療として遺伝子治療による血流再建などさまざまな分野からのアプローチが可能になっている.また予防的な取り組みとして足病変に対する啓発や処置などを行うフットケアの取り組みも広まってきている.糖尿病による切断の85%は早期発見と適切な治療により回避できる可能性があるとの報告もあり1),特にPADの進展によって生じる重症下肢虚血(critical limb ischemia;CLI)に対しては血行再建術が最適な治療として推奨されている2).しかし,創治療が進歩し血行再建術が行われるようになっても救肢の困難な例は多く存在し,切断治療は依然として重要な治療法であることに変わりはない.
ここで問題となるのが診療連携のあり方である.救肢治療は複数の診療科と職種による協力体制のもとで行われる一方で,切断に至った症例に関しては切断リハビリテーションのチーム医療が必要とされる.両者の構成と目的意識は,もともと一致しないところからスタートするものであり,その橋渡しには新たな努力が必要である.また,切断リハビリテーションが特殊な専門領域化している現状もある.切断は本来リハビリテーションの基本項目であるが,リハビリテーションが多様化しているなかで症例数も多くはなく,適切な切断リハビリテーションを行うための高いスキルとチーム力を有する施設は限られている.日本における切断医療の実態は全国的な調査も行われておらず,診療連携に関する議論が未だに広まらないほど医療政策的にも遅れている.
以上より本稿では,特に集学的治療が必要とされる高齢者の血管性下肢切断を中心に医療連携のありかたについて述べることとする.
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