Derm.2021
雑用の中にこそ,宝物が隠れている
牧野 貴充
1
1熊本大学病院皮膚科・形成再建科
pp.140
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206358
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大学病院に勤務していると実に多くの雑用がある.診療や研究のほかに,学生教育や関連学会などの事務および実務作業,さらにはセンター試験や医学部進級試験の監督など多岐にわたる.
あるとき,先輩から医学部学生を対象とした基礎研究の体験実習での指導担当を頼まれた.率直に言えば,病棟業務のなか,負担だと感じたが,簡単に行える皮膚組織の免疫染色,血清のELISA法を体験してもらうことにした.事前に全身性強皮症とサイトカインについて調べて,IL-16に着目した.結果は,思いがけず全身性強皮症でIL-16が高発現していることを証明できた.やる気のある学生だったため,論文作成指導まで行い,学生の丁寧な考察と熱意が伝わりRheumatology誌へ掲載された.振り返って考えると,実験の下準備や学生への説明,指導は面倒だと思いながらやっていたが,実験結果を見た後から急に楽しくなって,学生と一緒に論文を書き上げた.今では良い思い出となり,それは小さな宝物だけど,私の業績を代表するものになった.その論文のおかげで,あのカロリンスカ研究所とメイヨークリニックから投稿された論文の査読依頼があり,とても光栄に感じている.
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