Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
精神障害をもつ方々に対する治療以外の支援について,国内外における先人の実践は膨大にあるものの,その活動がわが国で法的に認められたのは1987年成立の精神保健法および1993年成立の障害者基本法である.わが国では,他の障害者施策との格差が大きいままであること,利用者とその家族あるいは専門家までもが精神障害に対してなおも誤解を留めていることなどが背景状況として特徴的である.
一方,ケアマネジメントはケースマネジメントという名称で,1970年代の米国における脱施設化および精神障害者地域生活支援の工夫から展開された体制と技術である.当然わが国においても,精神障害をもつ方々の地域生活を支援するために欠くことのできない活動である.わが国の法律がどのように変化するにせよ,ケアマネジメントの実践は現場で直に求められている2).
一般に技術は臨床現場で工夫され拡大した後に法律で後付けされるものであるが,このケアマネジメントに関しては,先に行政施策として研修事業が展開していることも特徴的である.これまでの研修事業の様子では,①体制と技術が混同され,制度に技術が引っ張られてしまいがちである,②支援技術よりも記載形式の研修となりがちである,③日常活動と研修内容が結びつかずに実践できていない,といった諸傾向が見られる.また,本来ケアマネジメントは身体・心理・社会的という包括的な視点をもつ考え方であり,複合的な問題を解決することに有利さがあるのに対し,障害種別に分けた研修体制を実施することにそもそも問題があろう.
ともあれ,これからのあらゆる対人サービスに必要なケアマネジメントがわが国においても広まっていくことは喜ばしい.ここでは,精神障害を対象とする場合に焦点を当ててケアマネジメントをめぐる現状と課題を整理しておきたい.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.