特集 神経難病ケアのコペルニクス的転回
【症状コントロールの進歩】
神経難病在宅ケアの実践と心構え—問題解決への道
川島 孝一郎
1
1仙台往診クリニック
キーワード:
実体と構成概念
,
国際生活機能分類(ICF)
,
地域包括ケア
,
アドバンス・ライフ・プランニング
Keyword:
実体と構成概念
,
国際生活機能分類(ICF)
,
地域包括ケア
,
アドバンス・ライフ・プランニング
pp.246-249
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200149
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Case
日本では,全身麻痺・人工呼吸器・胃瘻のALS(筋萎縮性側策硬化症)生活者が独居可能
生活者:60歳,女性.
55歳時にALSと診断.症状が進行し胃瘻と人工呼吸器が必要となった.
ある医師は「胃瘻や人工呼吸は無理な延命」と言う.別の医師は「着けなければ餓死,窒息」と言う.医師によって言葉の意味や解釈が違う.両者の共通点は身体の説明だけ.
私(ご本人.以下同様)は思った.「着けないと決めても,着けると決めても1),今,私は生きている.いずれ死ぬ日が来る時まで,どのようにより良く生きてゆけばいいのかを医師は示してくれない」.私は途方にくれた.意思決定が可能なためには,歩む道筋と具体的な支援を示して欲しいのに.
「孫が生まれるまで生きて!」と言う娘の一言が後押しになった.娘は私の心に寄り添ってくれた.胃瘻と人工呼吸器を着けながら,「私には住む家がある.早く帰りたい」と思った.医師や看護師,ソーシャルワーカーに説明を求めたが,「帰宅はできないから転院」だと言う.帰宅しても家族から,疲弊,多額の費用で生活破綻等々の答えが返ってくるだけだった.
ところが,私と同じ状況の方が一人暮らしをしているという情報が,患者会から入ったのだ.「まさか?」と思ったが,実際の生活を見学に行き,「これなら私も生きていける」と思えた.同時に私は確信した.「医師は信用ならない!」と.お金持ちでもない私にも,十分に具体的な生活設計が行われ,半年後には自宅での独居生活が始まった.
私は呪縛から解放された.
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