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はじめに
パーキンソン病の人口10万人当たりの有病率は,今や約100人と言われており,日本全国で10万人と推定されている1).パーキンソン病では,姿勢反射障害,無動がみられ,そのために,動作・歩行時に転倒する危険性が高い.われわれの行った北海道在住のパーキンソン病患者325名〔平均年齢68.3±8.5歳,Hoehn-Yahr(以下,H-Y)重症度分類stage Ⅰ:22名,stage Ⅱ:17名,stageⅢ:89名,stage Ⅳ:163名,stage Ⅴ:26名(判定不能:8名)〕にアンケート調査を行ったところ,現在困っている症状としては,85.9%の者が歩きにくいと訴え,78.0%の者がバランスを崩しやすいと答えた2).さらに,過去1年間においての転倒回数(図1)は,「転倒なし」がH-Y stage Ⅰ & Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの順で50.0%,21.7%,14.2%であり,「転倒回数10回以上」がstage Ⅲ,Ⅳの順で24.1%,32.2%とかなり高くなっている.さらに,転倒時の状況に関して,①立ち上がり時,②立位時,③歩行開始時,④歩行中,⑤歩行終了時,⑥方向転換時,⑦座位への変換時,⑧その他,について質問を行ったところ(図2),H-Y stage Ⅰ & Ⅱでは項目④が52.9%と最も高く,stage Ⅲ,Ⅳでは項目④以外にも項目①,③,⑥が高かった.このように,H-Y stage Ⅲ,Ⅳでは,特に,動作・歩行時の歩行開始時や方向転換時での転倒回数が増え,転倒時骨折の危険にさらされることが多い.実際,われわれのアンケートの結果では,転倒時骨折は,H-Y stage Ⅰ & Ⅱでは0%であるが,stage Ⅲでは30.2%,stage Ⅳでは36.1%であった.
パーキンソン病に対する治療は抗パーキンソン病薬,リハビリテーション訓練,深部電気刺激療法などが主体である.これらの治療により,症状のなかで安静時振戦,固縮,無動などはコントロールが行いやすいが,姿勢反射障害およびすくみ足などの歩行障害は,コントロールが困難な場合も多い.特に,すくみ足は歩行開始時や方向転換時に増強するため,前述のアンケート調査の結果でも認められたように,転倒が誘発されやすい.
そこで,パーキンソン病に対するリハビリテーション訓練のEBM(evidence-based medicine)をまず述べ,さらに,すくみ足などの歩行障害に対するわれわれの試みついて述べたいと思う.
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