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はじめに
大腿骨頸部骨折は高齢者に多くみられるため,治療がうまくいかないと歩行機能が回復せず,寝たきり状態につながる危険性が高い.現在,高齢者の要介護状態あるいは寝たきり状態をもたらすものとして脳血管障害とならび重要な要因とされている1).
筆者が昭和50年代に整形外科に入局し3年目に赴任した病院では,大腿骨頸部内側骨折に対して骨セメント固定の人工骨頭置換術を行っていた.後療法として,その病院では1週の臥床の後,部分荷重から歩行訓練を開始し,1か月くらいで全荷重としていた,赴任直後,若いやる気に燃えた理学療法士に,1か月待って全荷重とする理由を尋ねられ,明確に答えることができなかった.大学ではセメント固定の場合,すぐに全荷重としているし,文献的にも全荷重可能としているものが多く2),免荷する特別な理由はないということで,離床後すぐに全荷重とするプログラムに変更した.大腿骨頸部骨折を起こす高齢者は部分荷重で歩行訓練を行うことが難しいものも多いため,何とかならないかという着想のようであったが,離床直後より全荷重可としたところ歩行訓練がスムースに進む者が増え,回復が早まった.
医療においては経験と習慣により決められている部分が非常に多く,「その根拠は」と問われるとはっきりとは答えられないことも多い.経験に頼るため,新しい試みが一度失敗するとすぐに元のプログラムに戻ってしまうこともある.現在は以前に比べ,医師の一方的な裁量で治療を推し進めることは他部門のスタッフの協力が得られがたくなり,一方で各部門から医師への質問も行いやすく,矛盾点が明らかにされやすい環境になってきている.これを系統立てて推し進め,治療内容を改善しうるものとしてクリニカルパスの利用が広まってきている.
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