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はじめに
Quality of life(QOL)はリハビリテーション医学の領域で最も重要なキーワードの一つである.本誌でも過去に3回の特集が組まれた.だが,QOLとその関連用語を表題にしたわが国のリハビリテーション医学分野での研究は非常に少なく,学会誌では創刊以来1本,本誌でも投稿原稿は5本が掲載されたに過ぎない.OutcomeやEvidence-based medicine(EBM)が強く求められている時代に,QOLによってそれを確認する研究さえも少ない原因は,QOLのもつ定義の不確定性,概念の多様性,主観的存在が科学性の欠如として敬遠されているか,あるいは日本の大学医学部に置かれたリハビリテーション科の特殊な状況がQOLを検討対象にする余裕を喪失させている可能性が考えられる.しかし,リハビリテーション医学は日常生活の自立性を評価するActivities of daily living(ADL)という概念を発展させてきた歴史がある.QOLはそれを超えた高い次元からヒトの存在意義を把握しようとする概念である.国際的に見ればリハビリテーション医学の領域でQOLを主題とする研究報告は非常に多く,研究のレベルはさらに向上すると期待されている.今の状況が変化するのも時間の問題であると期待したい.
QOLに関わる要因としては,健康,教育,雇用,余暇,所得,環境,犯罪,家族,平等などがあげられており1),その評価基準は環境条件,宗教,文化,価値観によって変化する.危機的な状況下では生命の存否のみが重視され,平時では生活・人生に関心が移行する.さらに基準は時間の変数でもある.特に,主観的QOLでは,過去の経験と対比して現在を判断するか,将来を危惧あるいは期待して判断するかによって評価は異なる.また,時間は年齢を変化させ,年齢は基準を変化させる.青少年期では家庭養育,学校教育,友人との交流,両親からの独立などがQOLに影響し,壮年期では家族関係,社会的交流,就労,家族の養育などが,高齢者では疾病,身体・心理機能,家族環境,経済状況などがQOLに大きく影響する2)という.
医療技術の進歩と急性疾患の克服,高齢者の慢性疾患の増加に伴ってQOLが医療行為の目標として重視されるようになった.そして,医療行為の効果判定指標としてもQOLが導入されつつある.ここでは現在使用されているQOL評価指標を紹介することが筆者に与えられた課題なので,知る範囲で医学領域で使用されて普及度の高いと思われる指標を以下に列挙する.
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