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はじめに
スモンとは,経過・臨床症状・病理学的所見から名づけられたsubacute myelo-optico-neuropathy(亜急性脊髄・視神経・末梢神経障害)の頭文字SMONを取った疾患名である.1955年頃から1970年頃に集団発症したキノホルムが原因の薬物中毒疾患で,腹部症状に引き続いて,亜急性に脊髄横断症状を呈する.後遺障害として,視力障害,対麻痺,下肢のしびれ,膀胱直腸障害などが報告されている1).1973年までに11,127名の患者が認定され,2000年4月の時点で健康管理手帳を受給しているスモン患者数は3,187名である.スモン集団発生から30数年を経過した現在では,慢性化した神経症状に加齢や合併症の影響が加わり,スモン患者の障害像は複雑化してきている.
われわれは1988年より厚生省特定疾患スモン調査研究班(現在,厚生科学研究費補助金「スモンに関する調査研究班」)の班員として,スモン患者の日常生活動作(ADL)や日常生活満足度に関する研究を行ってきた2).これまで,スモン研究班員により疫学,病理,病態,症状,治療に関する多くの研究が実施され,その成果は研究班報告書に掲載されているが,スモン患者の障害やライフスタイルをリハビリテーション医学の立場から包括的に捉え,脳卒中などの障害者や在宅高年齢者と比較検討した研究は少ない3).スモンの原因や病態が解明された現段階では,患者の障害やライフスタイルを適切に評価して,リハビリテーション医療や保健・福祉の立場からどのような介入やサービスを提供すれば良いか,その適切な効果判定は何かを明らかにする臨床的研究が重要となってきた.
そこでスモン患者の包括的障害評価の予備的研究として,リハビリテーション医学で最も頻用されているADL評価法のBarthel Index(BI)4)と脳卒中患者の高次の活動指標5)あるいは高年齢者のライフスタイルの評価6)として用いられるFrenchay Activities Index(FAI)でスモン患者の障害やライフスタイルを評価することにした.今回の研究目的は,スモン患者,脳卒中患者,在宅高年齢者の障害やライフスタイルの比較検討を行い,1)BIとFAIを用いてスモン患者の障害やライフスタイルの特性を捉えることができるか,2)BIとFAIを用いてスモンと脳卒中の障害を区別することができるか,3)BIやFAI以外に,今後どのような評価を追加すればよいか,を明らかにすることである.
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