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はじめに
最近,“難病”という言葉が通用している.これは厚生省の,いわゆる特定疾患をさし,その数はすでに40にも及び,その一部にはすでに医療の公費負担などの社会的処置が講ぜられている.スモンはこの難病の一つであり,しかも当初における感染説により大きい社会的不安を起し,このため厚生省は昭和44年9月スモン調査研究協議会を発足させて病因の究明のために総合研究を進めるに至り,これが今日の40に余る厚生省特定疾患研究班誕生のきっかけをつくった特記さるべき疾患でもある.
スモンは昭和32年頃,下痢腹痛などの腹部症状に続いて,足底部より比較的急速に上昇する特異な異常知覚を主とし,運動障害などの神経症状を呈する特異な疾患として報告され1~3),つづいて本症が35年頃より全国各地に急激に多発して世の注目を集め,臨床ならびに病理学的にSubacute myelo-optico-neuropathyに相当するとして4)SMONと略称されたものである.本症は当初,下痢腹痛などの臨床症状,疫学的研究などから病因として感染説が大きく疑われたが,緑舌,緑便,緑尿などへの着目から5~7)キノホルム病因説が有力となり,研究班の総力を挙げた総合研究の結果,少なくとも,現在私どもが問題としている対象についてはキノホルム病因説が結論された8).事実キノホルム使用中止の昭和45年9月以降の発生は激減し,とくに昭和48年以降の新発症は全く報告されなくなっている.
このように,わが国で昭和30年代以来問題になったいわゆるスモンの新発生はなくなったといってよいが,研究班の全国疫学調査でキノホルム中止直前の昭和47年3月までの本症患者は9,249名に達し9),薬害としての病因と関連して後遣症のリハビリテーション(以下リハと略記する)が世の注目を集めている.本症が神経疾患であり,その大部分が多かれ少なかれ後遺症という永久障害を残すことが予想される以上,リハ医療と研究は当然本症発生と同時に開始されるべきものであったが,前述のごとき経緯で明らかなように,当初の研究目標は病因の究明に集中され,リハに関する調査研究はわずかに本症の予後に関する私どもの2,3の報告にとどまり10~12),本症のリハの本格的研究は昭和48年研究班内に設けられたリハビリテーション分科会の発足によって始めて開始されたといってよい.以下本稿ではまず,リハの前提となる本症の予後に関する私どもの調査研究の要約を述ペ,次いでリハビリテーション分科会の昭和48,49,50年の3年間に亘る研究の概要を紹介し,そして最後に昭和51年に本分科会がまとめたスモン患者のリハ指針をつけ加えたいと思う.
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