Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヘッセの『ガラス球演戯』―ヨーゼフの来談者中心療法
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.88
発行日 2002年1月10日
Published Date 2002/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109675
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ヘッセ(1877~1962)は30代後半に精神的な危機に陥ってユング派の精神分析療法を受けているが,1943年に発表された彼の代表作『ガラス玉演戯』(高橋健二訳,新潮社)には,ロジャーズ(1902~1987)の来談者中心療法を思わせる対応が描れている.
『ガラス玉演戯』の中の挿話「ざんげ聴聞僧」には,ヨーゼフというすぐれた「聞きとる能力」の持ち主が登場する.36歳で世俗の生活を捨てて厳しい修業に励んだヨーゼフは,やがて「人の話を聞き,耳と心を開いて,その人にささげ,その苦悩と憂慮とを受け入れ,いたわり,苦しみをなくし,安心させて帰らせること」ができるようになる.
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