Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヘッセの「湯治客」―「人は成熟するにつれて若くなる」より
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.768
発行日 1997年8月10日
Published Date 1997/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108454
- 有料閲覧
- 文献概要
ヘッセのエッセイ『湯治客』(岡田朝雄訳,草思社)には,座骨神経痛に悩まされていたヘッセが,保養地の集団療法的な効果に気づくというエピソードが描かれている.
ヘッセが,初めてドイツの温泉保養地バーデン・バーデンを訪れた時のことである.いささか難儀を覚えながら列車を降りたヘッセは,自分の乗ってきた列車から,自分のほかにも3,4人の座骨神経痛患者が降りてくるのを見た.「彼らが座骨神経痛を患っているということは,不安そうな尻の引き方や,おぼつかない足取りや,頼りなさそうな,べそをかいたような表情や,慎重な身のこなしなどからはっきりとわかる」.しかもヘッセは,彼らが自分よりも「苦しそうで,気の毒で,病気がひどく,かわいそうな人たち」であることに気づいた.「この3,4人はみな私よりもひどい顔のしかめかたをし,私よりも力をこめてステッキによりかかり,太腿を私よりもっとふるわせて引き上げ,靴底を私より不安そうに,不快そうに地面におろすのである」.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.