映画評
汚水なき惡戯
木下 正一
pp.36-37
発行日 1957年3月1日
Published Date 1957/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201230
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近頃,私は特別に忘れつぽくなつてしまつたと思うが,大ていの映画は見てしばらくたつと殆んど忘れてしまう.しかし,この「汚れなき悪戯」という映画ばかりは,もうやがて2カ月ほど前に,或る試写会で見せてもらつたのだけれど,その清らかな美しさが心の奥底に強く印象されていて,いまだにどうしても忘れることができない.近く公開上演される日が来るらしいので,もう1度見て,その深い感動,その美しい印象をもつと深くしたいという気持も強く動いている.
この映画の主人公はマルセリーノと呼ばれる天真爛満な男の子で,孤児である.この子供を演じたカルボ少年というのは,この映画の作製のために募集された5000人の応募者の中から慎重に選ばれたという.僅か6才の子供ではあるけれども,さすがに精選されただけのことあつて,その清純可憐なこと,演技のよさ,1度見た眼には深く印象されてしまう.
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