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はじめに
平成2年から3年にかけて財団法人日本公衆衛生協会が実施した60歳以上の在宅高齢者に関する調査では,ほぼ毎日尿失禁を呈する者は約100万人,何らかの尿失禁を呈する者は約400万人と推定されている.うち,医療機関などで治療を受けている割合は男性15%,女性が約3%であった.特に女性の約89%が適切な治療を受けていないことが明らかとされた1).尿失禁は直ちにその症状が生命を脅かすものでないことからしばしば軽視され,羞恥心などから専門的治療を受ける者も少ない状況である.
本邦では,尿失禁に対する治療として,泌尿器科が中心となって薬物療法,骨盤底筋群の筋力強化,外科的治療のほかに電気刺激が実施されてきた.一方,海外では,リハビリテーション領域においても骨盤底筋訓練,バイオフィードバック療法および電気刺激が実施されてきた2,3).
従来の電気刺激は,直腸,膣や陰部神経領域にプラグや接触式電極によって体外より刺激する方法が主として行われていた4).しかし,これらの治療法は,陰部や肛門に電気を流すことに対する拒否感,抵抗性が強く,普及されにくい現状であり,陰部や肛門以外に刺激部位を求めることが課題とされてきた.上記以外の刺激部位として,大腿四頭筋,ハムストリング5),仙骨部の直上皮膚6)が用いられ,その治療効果が報告されている.なかでも仙骨部表面電気刺激が難治性尿失禁に対して試みられ,治療後24時間以内に自覚所見,他覚所見に改善が認められている6).また,尿失禁および尿閉を主訴とする症例に対して,仙骨部表面電気刺激により下部尿路に及ぼす短期効果について検討され,尿流動態検査に何らかの変化が生じることが報告されている7).
今回,われわれは難治性尿失禁に対して仙骨部表面電気刺激を長期的に実施し,自覚所見および他覚所見について検討したので報告する.
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