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はじめに
排尿障害の治療を目的とした電気刺激療法には,電極の種類によって埋め込み電極による方法と表面電極による方法がある.
埋め込み電極による方法は,個々の神経・筋の選択的刺激が容易で,安定した刺激を長期間継続でき,また刺激時の疼痛が表面電極と比べて少ないといった利点がある1).石郷岡,半田ら2,3)は,埋め込み電極による骨盤底筋群への電気刺激を過活動性膀胱による切迫性尿失禁患者10人に行い,80%の症例で有効であったと報告した.また,Dijkemaら4)は,埋め込み電極による第3仙髄根電気刺激を切迫性尿失禁患者23人に行い,90%の症例で1回排尿量の減少と排尿回数の減少を認めたと報告している.
一方,表面電極による方法には,プラグ式電極を用いた経膣・経肛門刺激法および会陰部表面電極による方法があり,1963年頃から,主として欧米で臨床的に用いられてきた5-11).これらの方法は,陰部神経を電気刺激するもので,治療成績は40~75%であると報告されている12-15).Vodusekら16)は,脊髄損傷患者で排尿筋過反射による低コンプライアンス膀胱20人に対し,男性では陰茎部,女性では会陰部に表面電極を装着して電気刺激療法を施行した結果,40%で排尿筋過反射が抑制され,膀胱容量が増加したと報告している.また,Primusら17)は,頻尿および切迫性尿失禁患者51人に対して経膣電気刺激を行い,59%で有効,Trsinarら18)は,切迫性尿失禁患者73人に経肛門電気刺激を行い,75%で尿失禁の改善を認めたと報告している.
埋め込み電極による電気刺激は,表面電極による方法に比べ治療成績が良好であるが,手術侵襲が大きく,電極刺入部位における皮膚の感染症が問題である1).また,プラグ式経膣・経肛門刺激あるいは会陰部への表面刺激による方法は,刺激部位の疼痛や長期間の使用で電極と接触する部分の粘膜に損傷を伴うこと,さらに電極装着に際する異和感のために本邦では標準的な治療法としてはあまり普及してこなかった1).
仙骨部表面電気刺激は,薬物抵抗性排尿障害患者を対象に,1994年から当教室および泌尿器科学教室で臨床的に試みてきた方法である.浪間,内,半田ら19,20)は,9名の排尿障害患者に本法を施行し,56%で自覚症状の改善とUDS上の膀胱容量,膀胱コンプライアンスの改善を認めたと報告している.刺激部位が仙骨部皮膚表面であるため,装着が簡便であり,経膣・経肛門および会陰部刺激に比べて患者が受容しやすい方法である.しかし,経膣・経肛門,会陰部刺激と異なり,仙骨部表面刺激がいずれの神経に作用しているのかについては未だ明らかになっていない.
本研究では,排尿障害患・者に対して電気刺激中にUDSを行い,膀胱容量,膀胱コンプライアンス,無抑制収縮圧,無抑制収縮誘発閾値,尿道内圧の各パラメータが電気刺激によっていかなる変化を示すかを検討する
ことで,本法の作用機序について考察した.
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