Japanese
English
特集 脳卒中の機能障害
自律神経異常
Autonomic dysfunction.
伊藤 倫之
1
,
美津島 隆
2
,
中村 健
3
,
田島 文博
2
Tomoyuki Ito
1
,
Takashi Mitsushima
2
,
Takeshi Nakamura
3
,
Fumihiro Tajima
2
1国立伊東重度障害者センター
2浜松医科大学リハビリテーション部
3門司労災病院リハビリテーション部
1Ito National Rehabilitation Center for Severly Disabled Persons
2Department of Rehabilitation Medicine, Hamamatsu University School of Medicine
3Department of Rehabilitation, Moji Rosai Hospital
キーワード:
血圧調節
,
筋交感神経
Keyword:
血圧調節
,
筋交感神経
pp.1107-1112
発行日 2001年12月10日
Published Date 2001/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109639
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はじめに
体性感覚系や運動系と異なり,内臓神経系は,多彩な刺激に応じて内臓器官およびさまざまな腺の機能を調節し,内的環境を統御する.内臓神経系には感覚線維系(求心路)と運動線維系(遠心路)があり,生体の恒常性を保持するために必要なさまざまな反射作用を司る.遠心性内臓神経を,通常,自律神経系と呼んでいるが,本稿では便宜的に内臓神経系一般を自律神経系とする.
内臓性求心路は,脳神経を介して脳幹に直接入る経路と脊髄から脳幹に入る経路があり,ともに脳幹の網様体にシナプスを形成する.ここまでの経路だけが良く知られているため,テント上の病変が多い脳血管障害者においては自律神経障害は少ないように誤解されやすい.しかし,内臓性求心路は視床下部,視床,大脳基底核,大脳皮質などを含むテント上にまで上行し,遠心路も感情的な反応などは辺縁系によって惹起され下降する.
以上のように,脳血管障害者は,脳幹部病変を持つ者はもちろんのこと,テント上病変者も含め,自律神経系ネットワークのいずれかに影響をもたらすことは容易に想像がつく.臨床的にもRSD(reflex of sympathetic dystrophy)の一つである肩手症候群を代表として,多くの自律神経障害が知られている.
しかし,脳血管障害者における自律神経障害に関する研究は混沌とした状況にあり,肩手症候群ですら発症機序が不明である.また,自律神経といっても,あまりにも範囲が広く,とても総括することは困難である.
本稿は,自律神経のうち,主に臨床に密接に関連を持つ循環器系,特に交感神経系を中心に,われわれのデータや近年の報告を概略する.
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