Japanese
English
特集 リハビリテーション工学の最近の進歩
歩行動作シミュレーション
Computer simulation of human walking.
長谷 和徳
1
Kazunori Hase
1
1産業技術総合研究所
1National Institute of Advanced Industrial Science and Technology
キーワード:
数学モデル
,
神経筋骨格モデル
,
順動力学
,
事前評価
Keyword:
数学モデル
,
神経筋骨格モデル
,
順動力学
,
事前評価
pp.497-501
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109504
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はじめに
リハビリテーション分野における歩行分析では,光学式運動計測システム,床反力計,あるいは筋電図などの計測装置を使って被験者の運動状態,生体信号を計測し,得られたデータの定量分析を行う方法が一般的に採用されている.このような実際の人間を対象とした分析手法を用いれば,各患者の障害レベルの診断や,手術,リハビリテーション後の歩行改善度を定量的に評価することができ,既に多くの臨床例がある.
しかしながら,このような分析は実際の人間を測定対象とするため,生体内部の情報,例えば関節反力などの力学量,エネルギー消費,神経系の振舞などを非侵襲で定量的に測定することは困難である.また,歩行動作の測定から歩行動作という「結果」を客観的に分析することができるが,そのような歩容を生成するに至った「原因」を突き止めることは難しい.例えば,高齢者の歩行の不安定性や転倒予防の問題が近年注目されており,小刻み歩行などの高齢者歩行の特徴を論じた研究は多いが,歩幅が小さくなる身体的原因については必ずしも定説はないようである.
さらに,術後,リハビリテーション後の評価だけでなく,事前に「どのような治療,リハビリテーションを施せばよいのか」という処方を直接的に計測結果から導くことも困難である.
そこで,コンピュータ(計算機)によるシミュレーション技術がこのような歩行のリハビリテーションにおける問題の解決策の一つになると考え,われわれをはじめいくつかの研究が進められている.本稿ではリハビリテーション工学に関連した歩行動作の計算機シミュレーション技術の現状と可能性,さらに課題について言及したい.
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