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はじめに
シミュレーションとは,現実に存在するシステムあるいはこれから作ろうとするシステムのモデル(模型)を作り,これを使って実験することをさす1).古典的な例をあげる.120年以上も前に建築技師ジウラウスキーは針金で鉄橋の模型を組み上げた.当時,橋のすべての支柱は同じ寸法で作られていた.すべての支柱には同じ荷重がかかっていると考えられていたのである.彼は,荷重は場所によって異なることを示すために,模型の針金をバイオリンの弓でこすり,場所によって音色が違うことを確認した.この実験は数学によって裏付けられ,その後の研究を遂行するための資料になったという2).現在では模型のかわりにコンピュータを用いることが多く,その発展につれて,広範囲に使われるようになった.例えば,
①粒子の衝突や散乱などの物理学的現象の解明3)
②天文学シミュレーション4)
③生産ラインを効率的に運転する仕方の決定
④自動車の設計5)
⑤超高層ビルの耐震設計6)
⑥企業レベル・国家レベルでの経済予測
⑦人間の学習・思考・問題解決過程の分析
⑧脳の機能の解明7)
⑨脳・整形外科における手術様式の決定8)
等々があげられる.
シミュレーションを利用した模擬装置はシミュレータと呼ばれ,フライトシミュレータなどがよく知られている.またファミコンにもシミュレーションゲームがあり,このため最近では子供でもシミュレーションという言葉を使う.はやりのバーチャルリアリティ(仮想体験)もまさにシミュレーションである.このようにシミュレーションが用いられている範囲は非常に広いが,本稿ではシミュレーションが動作分析にどのように活用されているかに焦点をあてる.
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