Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
「偉大なる障害者」ジョサイア・ウェッジウッド―サミュエル・スマイルズの『西国立志編』より
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.84
発行日 2001年1月10日
Published Date 2001/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109406
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ジョサイア・ウェッジウッド(1730~1795)は,世界的な陶磁器会社ウェッジウッドの創業者であるが,彼は,12歳の時に天然痘にかかり,後に右下肢切断を余儀なくされた身体障害者でもある.しかし,1859年に発表され,明治期のわが国の青年に広く読まれたサミュエル・スマイルズの『西国立志編』(中村正直訳,講談社学術文庫)には,ジョサイアが「英国陶工の父」とか「産業革命の申し子」と呼ばれるまでになったのは,この障害あったればこそとするグラッドストーンの見解が紹介されている.
大英帝国を代表する政治家グラッドストーンは,ジョサイアを称賛し,彼が「名工となりしは,この病を受けたるゆえ」として,次のように語ったという.「この病はウェッジウッドをして軽快康強の工人となることあたわざらしむ.しかれども,ウェッジウッドをして肢体の用より大なるものに注意せしめたり.この病はウェッジウッドをして心を内に用いしめ,この術の律法秘奥を究察せんと企意せしめたり」.そのうえでグラッドストーンは,「この病はウェッジウッドをしてその成就するところ,往古アデンの陶工といえども,これに及ぶことあたわざるに至らしめたり」と,いわば障害の効用を説諭したというのである.
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