巻頭言
骨・関節疾患制圧10か年を迎えるにあたって
上好 昭孝
1
1和歌山県立医科大学リハビリテーション科
pp.513
発行日 2000年6月10日
Published Date 2000/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109244
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過去10年は脳疾患が世界中の医学の大きな課題であり,脳卒中については早期リハビリテーションの必要性,重要性についての研究が進み医療界に定着してきた.
21世紀を迎えるにあたり,少子・高齢化社会になっていくことは周知のところである.医学の進歩により延命はできたものの,四肢・体幹の運動機能に何らかの障害が残存し,自立やQOLを獲得するため,介護が必要になる者や機会が多くなっている.そこで身体機能に障害を持つ状態にならないように,国民の健康づくりと生活習慣病を予防することが,大きな社会的課題となっている.厚生省ではこの少子・高齢化対策として,本年から介護保険制度の導入と「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21計画)」を一大国民運動として展開しようとしている.本邦では世界一高齢化が進み,既に人口分布の14%を高齢者が占め,青年層が少ない過疎地では高齢者がさらに高い分布を示すと言われている.2025年には高齢者は総人口の27.4%となり,その後も上昇し続け,2045年には実に32%に達すると予測されている.一般に,85歳以上になっても自立生活を行えているものは,50%以下になると言われている.高齢化すれば,当然加齢による退行性疾患である変形性関節症など関節疾患をもったものが,60歳以上の半分の人にみられるようになるものと思われる.また,骨粗鬆症関連の骨折数も過去10年の約2倍になり,50歳以上の婦人の40%が骨粗鬆症由来の骨折をもつとも予測されている.
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