Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ラス・カサスの『インディアスの破壊についての簡潔な報告』―非差別的人間観の系譜
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.389
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108645
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1552年に発表されたラス・カサスの『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(染田秀藤訳,岩波文庫)は,スペイン人による新大陸でのインディオ(先住民)虐殺を糾弾した作品であるが,そのなかには,当時スペイン人によって奴隷化されていたインディオを,自分たちと同じ人間と見る平等主義的な人間観を見ることができる.
この作品の冒頭,ラス・カサスは,スペイン人の征服を「まったく邪悪で暴虐的な行為」と断じて,「罪のない人びとが虐殺絶滅の憂き目に遭ったり,スペイン人の侵入をうけた数々の村や地方や王国が全滅させられた」と指摘する.彼は,新大陸征服の野望に熱狂していた自国の人々に対して,「何ひとつとして正当な大儀や理由をもたずに,ただひたすら強欲と野望に心を奪われて,あの罪のない人たちに行なう破壊や虐殺がいかに不正きわまりないことか」と,その侵略行為の不当性を訴えたのである.
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