Japanese
English
研究と報告
肺切除術後の運動耐容能回復の阻害因子について―術前評価からの検討
Disturbing Factors for Recovery of Exercise Capacity after Lung Resection: Study of Preoperative Evaluations.
染矢 富士子
1
,
立野 勝彦
1
,
井上 克己
1
,
八幡 徹太郎
2
,
山口 朋子
2
,
池永 康規
2
,
前田 真一
2
Fujiko Someya
1
,
Katsuhiko Tachino
1
,
Katsumi Inoue
1
,
Tetsutarou Yahata
2
,
Tomoko Yamaguchi
2
,
Yasunori Ikenaga
2
,
Shinichi Maeda
2
1金沢大学医学部保健学科
2金沢大学附属病院理学療法部
1School of Health Science, Faculty of Medicine, Kanazawa University
2Division of Rehabilitation Medicine, Kanazawa University Hospital
キーワード:
肺切除術
,
肺機能
,
anaerobic threshold
,
運動耐容能
,
機能回復
Keyword:
肺切除術
,
肺機能
,
anaerobic threshold
,
運動耐容能
,
機能回復
pp.653-657
発行日 1999年7月10日
Published Date 1999/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109013
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はじめに
これまで,肺切除術後の予後についての研究は多数みられ,術後死亡や呼吸不全併発の予測のための術前評価が長年にわたり行われている.今までのところ,肺機能や運動耐容能の術前測定値が参考になると報告されており,1秒量1-7),最大酸素消費量4,7-10),拡散能力11)などが有用であったと言われている.
肺切除術後の死亡に至る呼吸不全の発生についての報告は,Boushyら1)が142名の症例について検討し,術式によらず1秒量が最も参考になると述べており,その基準を2Lとしている.また,Lockwood2)は243名の検討から,合併症の生じるリスクは1秒量が2.23L,努力性肺活量が3.33L,最大換気量が77.5L未満で認められると報告している.同様に,術前肺機能からの検討は諸家によりなされており,1秒量を基準とする報告が多い3-7).また,術前の最大酸素消費量の測定値のほうが,予後予測に有用であるとする研究者もおり4,7-10),10-15ml/kg/minを合併症または死亡の発生限界と関連づけている.
このように,術後合併症や死亡についての予後予測の研究が進められている一方で,症例のなかには術後肺炎や無気肺等の合併症を認めなかったにもかかわらず,運動耐容能の回復が遅延し,強い息切れが残存するものも経験する.しかも,このような運動耐容能回復遅延に対する検討はこれまでなされていない.そこで今回は,そのような症例について,術前の肺機能および酸素消費量から予測できる阻害因子がないか検討することにした.
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