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はじめに
肺気腫は,気道・肺胞系に不可逆性の閉塞性障害をきたし,日常の動作や運動中に換気制限とガス交換の障害を起こす疾患1)である.そのため,体動時に呼吸困難を訴えて身体活動が制限されてくる.この身体活動の制限が長く続くと,肺・気道系だけでなく心循環系,下肢筋や躯幹筋,骨・関節などの各組織の運動機能を一層低下させるという悪循環に陥る2,3).これらの機能低下は体力の減弱につながり,患者・障害者のADL(Activities of Daily Living),およびQOL(Quality of Life)を著しく低下させることになる.
従来,肺気腫患者に対して,疾病の発生要因の説明や禁煙の指導などの患者教育,リラクセーションや呼吸訓練の指導,正しい呼吸法を用いた種々の日常生活の指導などの基礎的訓練が行われてきた4).さらに最近では,運動負荷をかけて積極的に体力を向上させる訓練も報告されている5-7).しかし,近年の多職種による専門家チームで,かつ,各種のプログラムによって構成される「包括的呼吸リハビリテーション」8-10)や,同患者に対する臨床の現場では運動負荷訓練のみの効果を検討することは容易ではなく,また,その効果の評価に関してもまだ統一された基準がないといわれている11).今回そのなかで,運動負荷訓練のみの効果を検討することに主眼を置いた.
Casciariら12)によると,運動訓練は正しい呼吸法を使って行うべきであると述べている.われわれは,基礎訓練を終了して正しい呼吸法を習得した肺気腫患者に対して自転車エルゴメータを用いた下肢の負荷訓練を行い,その負荷訓練前後の効果を基礎訓練のみ行った症例と比較して検討した.また,評価方法は,われわれが使用している6分間歩行,下肢筋群や躯幹筋群の運動能力,ADL調査などを含めた身体活動の総合的評価を用い,さらに,運動訓練を施行した症例には漸増運動負荷検査と定常運動負荷検査による評価を加えた.
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