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はじめに
脊髄損傷の診断に当たっては,まず,受傷機転の聴取,および全身および四肢の理学的所見の詳細な観察により,臨床像を把握することが肝要である.受傷機転の詳細な聴取によって脊椎・脊髄損傷の概要を推測できる場合が少なくない.また,全身状態を観察する際には,合併した他臓器損傷を検索すると共に,頭・頸部あるいは背腰部の挫傷などの存在を確認することにより,受傷機転並びに損傷の概要が推測できる場合が少なくない.ついで,四肢の運動および知覚機能などの神経症状に関する詳細な検索では,肛門周囲の知覚と肛門括約筋反射を必ず検索し,四肢麻痺例についての呼吸状態の観察も頸髄損傷高位の診断および全身管理に際して重要である.
脊髄損傷の原因の大半は転落事故などによる鈍力損傷であり,一部の例外的な症例を除けば脊椎損傷を伴っている.このため,脊髄損傷に合併した脊椎外傷に関して,限局性圧痛,脊柱変形あるいは異常可動性などの病的所見を検索することも不可欠である.
しかし,脊髄損傷例の詳細な病態把握には各種の画像診断法による検索も欠かすことができない,従来は脊髄損傷例に対する画像診断法としては,各種のX線学的検査法を体系的に行って,損傷脊椎に関する徹底的な病態把握を行い,画像所見から損傷脊髄の病態を推測していた.近年,損傷脊髄自体の病態を画像として描出できるMRIの普及とともに,脊椎・脊髄損傷に対する画像診断法への取り組み方も変化してきている.現在ではMRIが脊髄損傷に対する中心的な画像的診断法として採用され,損傷脊髄の病態把握はもとより,治療法選択にも不可欠の検査法となっている.
以下,脊髄損傷例に対して国立療養所村山病院で行っている画像診断法の概要を紹介する.
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