Japanese
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講座 機能修復(2)
脊髄損傷の機能回復
Functional Recovery of the Spinal Cord Injury.
柴崎 啓一
1
Keiichi Shibasaki
1
1国立療養所村山病院整形外科
1Department of Orthopedic Surgery, National Murayama Hospital.
キーワード:
脊髄損傷
,
機能回復
Keyword:
脊髄損傷
,
機能回復
pp.465-471
発行日 1985年6月10日
Published Date 1985/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105401
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はじめに
受傷後十数年を経過した患者から「ゆうべ車椅子を担いで階段を上った夢をみました.」とか「夢の中では歩いていました.でも,小用の時には何故か下腹部を叩くんですよ.」等の述懐を聞いたことがある.すでに障害を受容して社会生活をしている患者のなお脊髄麻痺の回復を期待する胸中を見る思いがして,返答に窮した経験であった.
患者およびその家族だけでなく治療に携わるわれわれにとっても脊髄損傷の神経学的回復を望まぬ者はいないが,諸家の報告にもみるごとく完全損傷例の機能回復はほとんど期待できない.実験的には損傷脊髄に対する各種治療法が試みられ,その有効性に関する報告もみられている.しかしながら,臨床例における治療の実際との間にはなお多くの未解決の問題が残されている.臨床上は損傷脊髄の運命はほとんど受傷時にすでに決定されているものとして脊髄の二次的損傷の防止と残存機能の強化により,日常生活上の代償性機能の最大限獲得を図ることが原則となっている.
このためには損傷脊髄の機能的回復の限界および臨床的な機能的予後について高位あるいは損傷型別に熟知し,ひたすら麻痺回復を願う患者に円滑な障害の受容とリハビリテーション・プログラムの遂行を行わせることが肝要である.
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