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Ⅰ.はじめに
我が国では、先進諸国に類を見ない速さで高齢化が進み、2020年(平成32年)には全人口の4人に1人が高齢者1)という超高齢社会が目前に迫っている。このような高齢社会において、高齢者の健康指標の一つとして、「健康寿命」の重要性が叫ばれるようになった。健康寿命とは、一般に、痴呆もしくは寝たきりにならないで自立した生活が送れる期間を指している。つまり、単に生きるのではなく、生涯にわたり社会との接点を持ちながら、要介護状態に陥ることなく生き生きと生活を送ることが出来るという生活の質(Quality of Life)が、重要視されるようになっている。
しかし、高齢者の日常生活の自立状態は、かならずしも明らかではない。これまで行われてきた調査の多くは、すでに何らかの機能低下を有する高齢者の自立能力を、日常生活動作(Activities of Daily Living)や、手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living)を指標として検討しているものが多く、その指標や結果を、高齢者の75%にあたる、自立して地域で生活している者2)に当てはめることは難しい。また高齢者の体力の実態も、一般成人向けの体力測定でなされる場合が多く、その場合は、測定動作の難易度が高く、対象者が比較的体力水準の高い者に限られる危険性のあることが指摘されている3)。
一方、高齢者の身体活動量の実態は、さまざまな測定方法によって検討されている。生活時間調査法や歩数計、携帯用加速度計、心拍連続記録法などがある4)が、例えば生活時間調査法は、24時間の行動を詳細に記載する事が求められるため、高齢者を対象とした場合は負担が大きく、記憶力の衰えた高齢者の場合には正確性に欠けるとも考えられる。最近では、身体活動量の指標として歩数の妥当性が高いことが報告され5)6)、安価で簡便な歩数計、携帯用加速度計を使用して、活動量の指標とすることも行われている。しかしながら、高齢者の活動量は2METsを超える強度の運動量が、若者に比較して有意に少ない7)との指摘もあることから、高齢者の身体活動量は、立位での作業など微少な活動量も加味した検討も必要と考えられる。
そこで、本研究では、地域で暮らす高齢者が、日常生活を自立して営むために必要な動作の遂行能力を評価する目的で開発された「生活体力」3)を指標として用い、さらに、外出を中心とした日常生活状況の聞き取り調査や、生活習慣記録機(ライフコーダ:スズケン製)を用いることで、高齢者の身体活動量の客観的把握をめざした。さらに、歩数に数えられない微少運動と加味した身体活動量も考慮して分析することで、これらと生活体力との関連について若干の知見を得たので、ここに報告する。
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