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はじめに
痙性麻痺肢に対する関節可動域訓練や持続伸張は,緊張亢進に由来する関節拘縮の改善・予防・伸張反射の軽減,運動コントロールの改善を目的として施行される1).しかしながら,痙性の評価には統一されたものはなく,臨床的には深部腱反射やAshworth痙性スケールなどの評価1-4)を用いるが,その尺度は主観的である.客観的評価には,生体力学的方法として振り子試験およびKIN-COMなどによる等運動性運動機器による他動運動での評価1-3,5)や,電気生理学的方法として多チャンネル表面筋電図,H波,T波,F波などの評価1-3,5,6)が用いられている.
過去には電気的に誘発される脊髄単シナプス反射であるH波を用いた痙性評価の報告が多い.H波は筋伸張反射と同様な反射とされ,痙性の良い指標であるものの,脛骨神経刺激,下腿三頭筋記録以外での導出は困難で,計測肢位により影響を受けやすく,H波の振幅が不安定な欠点がある5-7).
近年,F波が痙性の電気生理学的指標になるとの報告8-12)がある.さらに,F波はH波よりも分節性運動ニューロン興奮の評価として正確で10),計測肢位による影響を受けにくく6),上肢・下肢ともに計測しやすい10,12).そのため,F波を上肢に応用すれば客観的評価が困難であった手指筋群の痙性の電気生理学的評価が可能である.一方,痙性麻痺の手指や手関節を持続伸張すると痙性は減弱するが,その効果を客観的に検討した報告は少ない13).
そこで痙性麻痺の手指・手関節に持続伸張を加え,その痙性抑制効果をF波パラメーターを用い測定し,持続伸張前の痙性の程度と痙性抑制効果に関しても検討したので報告する.
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