スコープ
身体の障害と認知について―リハビリテーションへの新たな視点の導入
本田 哲三
1
1東京都リハビリテーション病院
pp.777
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108178
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「この手がなかなか動かなくて」,「しびれが何とかならないでしょうか」,患者さん達の執拗な訴えに接して(たとえいささか辟易しても),彼らが実際にどのような体験をされているかを理解しようと努めるのは,われわれリハビリテーション医療者の任務の一つであろう.
従来,この問いへのリハビリテーションでの代表的な回答は「障害受容」と通称されている段階理論(stage theory)であり,その原型はフロイトの喪の仕事とコーピング理論である.前者は肉親を失った個人の心理を,後者は生体の危機への対処をモデルとしている.したがって,いずれも「身体の喪失体験に(正常な)精神一認知機能が反応する」という心身二元諭的な理解が前提となる.そしてこの立場では,身体の障害の中枢への影響は「身体像(図式)がくずれる」(Grayson,1951)と一括されてきた.
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